加工事例を紹介するため、顧客支給の図面から会社名と図番を消して画像にした。これで公開できるように見えますが、穴ピッチ、幾何公差、材質、外形が残れば、図面が伝えていた設計条件の多くは残ります。
CADの画面キャプチャーでは、タブやファイル名、背景に開いている別部品も写ります。図枠の中だけを見ていると、この周辺情報を見落とします。
ここではWeb記事へ使う図面一枚について、公開権限から画像の切り出し・模式図化までを順に確認します。特許性や営業秘密該当性を判定する記事ではありません。契約、顧客との取り決め、社内の公開基準を優先してください。
最初に止める条件
公開権限が確認できない図面は、識別情報を消す作業を始める前に公開を止めます。
公開権限が分かるまで、画像加工を始めない
最初に確認するのは、どこを黒く塗るかではありません。その図面を誰が作り、誰から受け取り、誰がWeb公開を承認できるかです。加工に使った図面が自社サーバーに保存されていても、公開許可を得たことにはなりません。
顧客支給図、共同開発の図面、外注先が作成した図面では、契約や秘密保持の取り決め、個別の掲載許可を確認します。中小企業庁の「知的財産取引に関するガイドライン」は、製造委託の目的物ではない金型の設計図面やCADデータなどの提供を、当事者の意思に反して強制しないという考え方を示しています。手元にあることと、社外へ公開できることは別です。
経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック」は、保有情報を洗い出し、秘密とする情報を決め、情報に応じた対策を選ぶ流れを示しています。公開範囲を判断する責任者が決まらない図面は、ぼかし加工で先へ進めず保留します。社内資料をWeb用に選ぶ役割分担は「製造業の製品資料・営業資料をWeb記事にする方法」でも整理しています。
タイトル欄を消しても、図面の中身は残る
表題欄(タイトル欄)には、図番、会社名、品名、設計者・承認者、改訂記号、作成日などが並びます。まずはここを確認します。ただし、同じ情報が注記、部品表、風船番号、透かし、欄外に繰り返されていることがあります。
一度消したら、元図を見ていない人にも画像を渡してください。「会社や案件、担当者を推測できる文字は残っていないか」と聞くと、作業した本人が見慣れて読み飛ばした箇所を拾いやすくなります。
寸法・公差・材質・処理・製造条件を見る
図面の中心は文字ではなく、製品を作るための条件です。全長、穴径、穴ピッチ、寸法公差、幾何公差、材質、熱処理、表面処理、溶接記号、検査指示を一つずつ見ます。一項目は一般的でも、その組み合わせが顧客仕様や製造方法を示す場合があります。
例えば、穴位置精度を伝える記事に、顧客部品の外形や全寸法まで載せる必要はありません。これは一般例ですが、単純な板の模式図へ置き換え、公開を承認した公差と測定位置だけを残せば、読者は「何を管理した加工例か」を判断できます。元図を縮小して読めなくするのではなく、説明に不要な情報を初めから持ち込まない方法です。
形状とCAD画面を、一枚の画像として見直す
寸法をすべて消しても、独特な輪郭、穴の並び、溝、断面、接続部から用途や設計意図が伝わることがあります。形状そのものを出せないなら、一部分の抜粋や、元形状をなぞらない模式図へ替えます。
設計者にとっての「画面の背景」も、公開情報になる
機械設計・製品設計に携わってきた筆者の立場では、CAD画面を単なる図として扱いません。ファイル名、タブ、部品ツリー、レイヤー名、非表示部品は、設計作業では見慣れた情報です。しかし、Webへ載せれば、案件や関連部品を推測する手掛かりになることがあります。
公開確認では、表題欄の文字、寸法・公差・材質などの技術条件、形状、画面周辺を別々に見ます。「会社名を消したか」だけではなく、この一枚から何を読み取れるかを確認し、説明に不要な情報は抜粋や模式図へ置き換えます。

| 見る場所 | 具体的な確認 | 公開用での処理 |
|---|---|---|
| 公開権限 | 作成者、提供者、契約、承認者 | 不明なら掲載を保留 |
| 表題欄・注記 | 図番、会社名、品名、担当者、改訂 | 不要な識別情報を除く |
| 技術条件 | 寸法、公差、材質、処理、製造条件 | 承認済みで必要な情報だけ残す |
| 形状 | 輪郭、穴配置、溝、断面、接続部 | 抜粋または模式図へ替える |
| 画面周辺 | タブ、ファイル名、部品ツリー、別部品 | 図面外も含めて切り直す |
CAD画面を撮る場合は、図面タブだけでなく、ウィンドウ上部のファイル名、保存先、レイヤー名、部品ツリー、非表示にした別部品まで確認します。写真の背景や画面端を見る方法は「工場写真をWebやSNSに載せる前の確認」も参考になります。
まとめ|必要な情報だけ残し、難しければ模式図にする
図面を加工する前に、「この画像で読者が何を判断するのか」を一文にします。加工範囲を伝えるのか、検査方法を示すのかで、残す情報は変わります。目的に不要な寸法や形状をすべて持ち込んでから隠すより、必要な部分だけを抜粋する方が確認しやすくなります。
模式図も自動的に公開できるわけではありません。元図の特徴的な形状や数値が残っていないかを見直し、元図、公開用画像、確認者、承認日、掲載先を記録します。本文との照合方法は「製造業の技術記事を事実確認する方法」にまとめています。
工房もののほんでは、社内資料から記事に必要な情報を選び、説明図へ整理し、公開前の確認を経てWordPressへ入稿する範囲まで対応します。詳しい作業範囲はサービス資料、個別の図面や資料を使えるか迷う場合はお問い合わせページをご覧ください。
