製品カタログ、仕様書、営業用のPowerPointはそろっている。それでもWebサイトの記事となると、何を書けばよいか決まらない。そこで既存資料から文章を抜き出して並べたものの、製品紹介ページとほとんど同じ内容になってしまうことがあります。
社内資料は、製品の情報を正確に保管したり、営業担当者が対面で説明したりするために作られています。Web記事を読む人は、その場で担当者へ質問できません。「自社の条件でも使えるか」「相談前に何を用意するか」といった疑問へ、記事だけである程度答える必要があります。
この記事では、小規模な製造業や機械設計事務所を想定し、手元の製品資料・営業資料から記事の材料を選ぶ方法をまとめます。新しく大がかりな取材を始める前に、既存資料で分かること、技術者へ追加で聞くこと、公開してよい情報を切り分けます。
記事へ直す前に
資料を記事へ直す前に、読者、答える質問、公開範囲を決めます。
製品資料はそのままWeb記事にならない

製品資料、営業資料、Web記事では、読む人と使われる場面が違います。
| 種類 | 主な役割 | 読む人の状況 | 不足しやすい情報 |
|---|---|---|---|
| 製品カタログ・仕様書 | 型式、寸法、性能、使用条件を正確に示す | 製品をすでに知っている、比較表を見ている | どの困り事に合うか、相談前の判断 |
| 営業資料・提案書 | 担当者の説明を補助する | 商談中で、分からない点を質問できる | 説明者が口頭で足している前提や例外 |
| Web記事 | 検索や紹介から来た読者の疑問へ答える | 製品名や会社名を知らない場合もある | 記事内で疑問、条件、次の行動までつなぐ必要がある |
カタログの章立てが「会社概要、製品群、特長、仕様、導入例」なら、それを同じ順に記事へ移しても、読者が最初に知りたい答えへなかなか届きません。Web記事では「この現象で困っている」「この条件で使えるものを探している」という入口から始めます。
営業資料も同様です。スライドに「高精度」「短納期」「一貫対応」とだけ書かれていても、営業担当者は商談で条件や実例を補っています。記事化するときは、スライドにない口頭説明を確認しなければなりません。
Googleも、検索向けに既存情報を言い換えるだけでなく、読者が目的を果たせる独自の情報や十分な説明を用意するよう案内しています。資料の文章を増やすより、誰のどの判断を助ける記事かを決める方が先です。
記事に使える社内資料を集める

記事の材料はカタログだけではありません。営業、設計、製造、品質の各担当者が持っている資料を一度並べると、追加取材を減らせます。
| 資料 | 記事へ取り出せる情報 | 公開前に確かめること |
|---|---|---|
| 製品カタログ・仕様書 | 製品名、用途、性能、材質、寸法、使用環境 | 最新版か。旧型式や廃止仕様が混じっていないか |
| 営業用PowerPoint・提案書 | 顧客の困り事、比較点、説明の順番、よくある反応 | 特定顧客向けの条件を一般化していないか |
| 見積り前の質問票・メール | 問い合わせ時に必要な図面、数量、納期、使用条件 | 顧客名、担当者名、案件情報を除けるか |
| 図面・工程図・検査表 | 形状、工程、検査項目、技術上の判断点 | 寸法、公差、品番、設備条件をどこまで出せるか |
| 製品・設備・作業写真 | 大きさ、構造、工程、使用状態 | 人物、掲示物、他社製品、管理番号の写り込み |
| 不具合・改善記録 | 起きやすい問題、原因、対策、確認方法 | 責任関係、顧客との契約、社内限定情報 |
| 営業担当者のメモ | 顧客が実際に使う言葉、断られる理由、比較される点 | 個人の印象と会社の正式見解を分けられるか |
ファイルを集めるときは、記事に使うかどうかをその場で決めなくても構いません。まず「内容を使える」「図だけ使える」「数値を丸めれば使える」「社内確認にだけ使う」と扱いを付けます。資料名と更新日も残してください。古い仕様書から記事を作り、公開直前に数値を直す作業は意外に時間がかかります。
写真や図面は、解像度の高い元データも探します。PowerPointへ貼った小さな画像しか残っていない場合、Webで拡大すると文字や線が読めません。元データがなければ、内容を確認したうえで新しい図表を作る方が見やすくなります。
一つの記事で答える質問を決める

資料を集めた直後は、記事に書けそうなことが多く見えます。ここで「製品Aについて全部紹介する」と決めると、再びカタログに近い記事になります。
先に、営業担当者が繰り返し受ける質問を並べます。例えば加工会社なら、次のような質問です。
- 薄肉形状でも変形を抑えられるか
- 図面が完成していなくても相談できるか
- 小ロットの試作から量産へ移れるか
- 指定した検査成績書を付けられるか
- 支給材や指定材へ対応できるか
この中から、一つの記事で一つの判断を扱います。「薄肉部品の加工方法」という広い題材ではなく、「薄肉アルミ部品を相談するとき、図面へ記載しておきたい条件」のように絞ります。すると、カタログの材質、対応寸法、加工設備、検査項目のうち、どれを使うかが決まります。
題材を選ぶ基準は、検索数だけではありません。営業が何度も説明していること、見積り前の確認が多いこと、相談後の行き違いが起きやすいことを優先します。実際の問い合わせで使われた言葉を見出しや本文へ取り入れると、社内用語だけの記事になりにくくなります。正式名称と呼ばれ方を照合する手順は、顧客の言葉を製品ページの入口へ使う方法で整理しています。
技術者へ追加で聞くときは、先に記事の質問と使う資料を渡します。「製品Aについて教えてください」よりも、必要な範囲を短時間で確認できます。質問の作り方は「製造業の技術者へ取材して記事にする方法」でも説明しています。
資料の順番を顧客の疑問順へ並べ替える

社内資料は、管理や説明の都合で並んでいます。Web記事は、読者が疑問を解消する順に組み替えます。
社内資料でよくある順番
- 会社や事業の紹介
- 製品名と製品群
- 製品の特長
- 仕様一覧
- 導入例
- 問い合わせ先
Web記事で読みやすい順番
- 読者が困っている現象や作業
- 一般的な原因と確認点
- 自社が対応できる条件
- 対応が難しい条件と代案
- 判断の根拠となる仕様・検査・事例
- 相談時に用意する情報
例えば、位置決め装置の営業資料に、機構図、モーター容量、ストローク、繰返し位置決め精度が載っているとします。記事のテーマが「狭い装置内へ位置決め軸を追加するときの確認項目」なら、最初に必要なのは製品名ではありません。設置寸法、可動範囲、荷重、速度、配線や保守空間といった選定条件です。その後で、条件に関係する仕様を示します。
カタログにある全仕様を本文へ転記する必要はありません。記事の判断に必要な項目だけを表へまとめ、詳細仕様は製品ページやPDFへ案内します。記事と製品ページの役割を分けると、同じ説明の繰り返しを減らせます。
仕様値には条件と確認方法を足す

仕様値は記事の信頼を支えます。ただし、数値だけでは読者が自社条件と比べられない場合があります。
仮に営業資料へ「繰返し位置決め精度 ±0.02 mm」と書かれているとします。記事へ載せる前に、少なくとも次の点を確認します。
- どの型式・ストローク・荷重条件の値か
- 測定位置と測定回数はどうなっているか
- 温度や速度など、結果に影響する条件があるか
- 精度を保証する値か、参考値か
- 実機の選定では別の誤差要因を加える必要があるか
条件をすべて公開できない場合は、「標準条件での参考値。保証値と選定条件は個別確認」のように、数値の位置づけを明示します。数値を出せない箇所も「高精度」「柔軟に対応」といった評価語だけで済ませず、材質、形状、数量、確認方法など、公開できる条件へ分けます。技術力を「対応条件」で伝える方法では、この分け方を整理しています。確認できない条件を執筆者が推測して補ってはいけません。
単位、桁数、用語も資料間でそろえます。カタログはmm、試験記録はμm、営業資料は「高精度」とだけ書かれている場合があります。元データを一つ選び、記事、図表、代替テキストで表記が変わらないようにします。
技術者へ原稿を返すときは、「数値をご確認ください」ではなく、「±0.02 mmは全型式に適用できるか」「保証値と書いてよいか」のように質問します。技術者が判断すべき箇所を絞ると、確認の往復が減ります。
図面・写真・事例は公開範囲を分ける

社内で使っている資料でも、そのままWeb公開できるとは限りません。記事へ使う情報を三段階に分けると判断しやすくなります。
| 区分 | 例 | 記事での扱い |
|---|---|---|
| そのまま公開できる | 公開済みカタログ、Web掲載用製品写真、承認済み仕様 | 最新版を確認して使用する |
| 加工すれば公開できる | 顧客名のある図面、管理番号が写る写真、細かな製造条件 | トリミング、ぼかし、簡略図、数値の範囲化を検討する |
| 社外非公開 | NDA対象図面、未発表製品、原価、固有の治具・工程条件 | 記事の理解にだけ使い、本文や画像へ載せない |
経済産業省は、不正競争防止法上の営業秘密について「有用性」「秘密管理性」「非公知性」の三要件を示しています。Webへ公開した情報は非公知とはいえなくなるため、営業秘密として管理する情報を記事へ出さない判断が必要です。
資料に外部メーカーの写真、購入したイラスト、規格書の図、顧客が作成した図面が含まれる場合は、自社の営業資料に入っていることだけでWeb掲載の許諾まで得ているとは判断できません。文化庁も、他人の著作物を利用するときは、著作物に当たるか、保護期間内か、利用許諾や権利制限規定を確認する流れを案内しています。
公開可否を技術者一人へ任せず、案件責任者や経営者も含めて確認します。技術的に正しいことと、会社として公開できることは別の判断です。
営業・技術・Web担当の確認を分ける

原稿を全員へ送り「問題があれば直してください」と頼むと、同じ文章を複数人が直し、確認が終わりません。役割を分けて返します。
| 担当 | 主に確認すること | 原稿で聞く質問の例 |
|---|---|---|
| 営業担当 | 顧客の困り事、問い合わせ時の言葉、相談の流れ | この質問は商談で実際に出るか |
| 技術担当 | 仕様、条件、工程、原因と結果、対応限界 | この数値はどの条件まで適用できるか |
| 品質担当 | 測定方法、検査記録、規格、保証範囲 | 参考値と保証値を区別できているか |
| Web・広報担当 | 見出し、文章、図表、リンク、表示 | 製品ページとの重複やリンク切れはないか |
| 案件責任者・経営者 | 顧客情報、契約、秘密情報、最終公開 | この図面と事例を社外公開してよいか |
一人が複数の役割を兼ねる小さな会社でも、確認項目は分けます。最終窓口を一人決め、営業と技術の修正をまとめてから執筆者へ返す方法が現実的です。
外部へ記事制作を頼む場合は、資料の受け渡し方法と保管期限も確認します。「製造業の記事制作を外注するときの確認項目」では、秘密情報、技術確認、修正回数を含む発注前の見方をまとめています。費用を比べる場合は「製造業の記事制作料金はどう決まる?」も参考にしてください。
そのまま使える記事化依頼メモ

担当者や外注先へ資料だけを渡すのではなく、次の項目を一枚にまとめます。空欄が残っても構いません。何が未確認かを分かるようにすることが目的です。
記事化依頼メモ
想定読者: どの業種・職種の人が、どの場面で読むか
記事で答える質問: 一つに絞った顧客の疑問
読後の判断: 問い合わせる、資料を用意する、製品を比較するなど
使用資料: ファイル名、版、更新日、資料の担当者
必ず入れる情報: 仕様、条件、確認方法、対応できない範囲
社外へ出さない情報: 顧客名、図面、数値、写真、工程など
追加で聞く相手: 営業、技術、品質、案件責任者
原稿確認者と期限: 技術確認、公開承認を分けて記入
記事の次の導線: 製品ページ、資料請求、問い合わせ、関連記事
依頼メモを作ると、資料不足も早い段階で分かります。例えば、対応寸法は載っているが不得意な形状が分からない、製品写真はあるが使用状態が分からない、導入例はあるが顧客の許可がない、といった点です。足りない部分だけ追加取材や作図で補います。
まとめ|最初に決めるのは読者・質問・公開範囲

製品資料や営業資料は、記事制作のよい材料になります。ただし、資料の文章と順番をそのまま移すだけでは、Webで初めて会社を知る読者の疑問へ答えにくくなります。
最初に決めたいのは、次の三点です。
- 誰が、どの場面で読む記事か
- 一つの記事で答える顧客の質問は何か
- そのまま公開する情報、加工して公開する情報、社外へ出さない情報はどれか
この三点が決まれば、必要な仕様と写真を選び、追加で技術者へ聞く範囲も絞れます。確認担当を分け、記事の末尾から製品ページや問い合わせへつなげれば、既存資料を営業とWebの両方で使える形に整えられます。
工房もののほんでは、製品カタログやPowerPointの棚卸しから、記事テーマの選定、追加質問、原稿、図表、WordPress入稿まで必要な範囲を組み合わせられます。手元の資料から何本の記事を作れるか整理したい場合は、サービス資料をご覧ください。資料の公開範囲から相談したい場合は、お問い合わせページから資料名と現在の状況をお知らせください。
