誤字脱字もリンク切れも直した。公開ボタンを押す前に、もう一度見るべきものがあります。仕様書の「参考値」が原稿では保証値のように読めないか、旧型式の数値が新製品の図に残っていないか。こうした食い違いは文章校正だけでは拾えません。
例えば、営業資料に「繰返し位置決め精度 ±0.02 mm」とあり、試験記録には測定時の荷重や温度が書かれていたとします。記事へ数値だけを移すと、読者は別の使用条件にも当てはまる値だと受け取るかもしれません。校正ソフトでは、この違いを見つけられません。
この記事では、完成した技術原稿から確認が必要な記述を拾い、根拠資料、確認者、公開可否を結び付ける方法を説明します。法律や規格への適合をこの記事だけで判断するのではなく、自社の品質・法務・技術上の手順を優先してください。
公開前の確認順
- 主張を拾う
- 根拠を結ぶ
- 数値・規格を照合する
- 図表・権利を確認する
- 承認記録を残す
技術記事の事実確認は誤字脱字の確認と分ける

技術記事の公開前確認には、少なくとも四つの仕事があります。担当者も根拠も異なるため、一つの「原稿チェック」にまとめない方が進めやすくなります。
| 確認の種類 | 主に見る内容 | 戻る資料 | 判断する人 |
|---|---|---|---|
| 事実確認 | 数値、単位、型式、材質、工程、原因と結果 | 仕様書、図面、試験記録、承認済み資料 | 技術、品質 |
| 表現確認 | 読者が誤解しない条件、比較の書き方、用語 | 根拠資料と原稿 | 営業、技術、編集 |
| 公開確認 | 顧客情報、秘密情報、写真、引用、許諾 | 契約、公開確認表、権利情報 | 責任者、顧客、広報 |
| 表示確認 | 見出し、表、画像、記号、リンク、スマートフォン表示 | 承認原稿とWebプレビュー | Web担当、最終窓口 |
最初に事実と出典を確かめ、その後で読みやすさを整えます。公開可否は技術確認と並行して進め、最後に承認原稿とWeb表示を照らし合わせます。
原稿から「確認が必要な主張」を拾い出す

原稿を最初から一文ずつ読むだけでは、重要な数字と軽微な言い回しが同じ重さに見えてしまいます。先に、間違えた場合の影響が大きい記述へ印を付けます。
確認対象になりやすいのは、次のような情報です。
- 数値、単位、公差、温度、時間、速度、数量
- 製品名、型式、材質記号、規格番号、設備名
- 「対応できる」「使用できる」「不要になる」など適用範囲を示す文
- 原因と結果を結び付ける説明
- 従来品、他方式、他社製品との比較
- 顧客の発言、導入結果、写真や図面の説明
検索機能で数字と記号を探すと効率が上がります。「%」「±」「mm」「μm」「MPa」「°C」に加え、過去資料の「℃」も検索します。「すべて」「必ず」「業界初」「大幅」「削減」といった語も、範囲や根拠が抜けると意味が変わるため確認対象です。
見出しと図の中も対象です。本文には条件を書いたのに、図の大きな文字が「30%削減」だけなら、画像だけを見た人には条件が伝わりません。表の列名やキャプション、画像の代替テキストも、本文と同じ主張として扱います。
AIで作った本文や図表も、同じように根拠資料と照合します。ただし、機密情報を入力してよいか、出力を誰が承認するかは、事実確認とは別に決めます。役割と停止条件は、製造業の記事をAIに任せてよい範囲で確認できます。
主張と根拠を確認台帳で結び付ける

確認箇所を拾ったら、原稿のコメントだけで済ませず、確認台帳へ一行ずつ移します。「何を見て正しいと判断したか」を、公開後にもたどれる形で残します。
| 原稿中の記述 | 根拠資料 | 版・更新日/ページ | 確認者・判定 |
|---|---|---|---|
| 対応材質の一覧 | 製品仕様書 | 第4版、2ページ | 技術担当、掲載可 |
| 精度の数値 | 試験記録と仕様書 | 試験日、対象型式を記載 | 品質担当、条件追記 |
| 工数削減率 | 作業記録 | 比較期間と対象工程を記載 | 部門責任者、再計算 |
| 顧客のコメント | 承認済み原稿 | 承認日と承認者を記載 | 営業担当、掲載可 |
台帳には、原稿箇所、確認する主張、根拠ファイル、版・ページ、確認者、判定、修正内容を記録します。仕様書と営業資料が食い違えば、資料管理者が現行版を確定するまで掲載しません。根拠を確認できない数値は、削除するか対象範囲を限定します。資料の集め方は「製造業の製品資料・営業資料をWeb記事にする方法」で説明しています。
数値・単位・公差・条件を照合する

数字だけでなく、対象・条件・取得方法を一組で照合します。
- 何の値か。対象製品、型式、工程、試験片はどれか
- どの条件の値か。荷重、温度、速度、数量、使用環境は何か
- どの方法で得たか。測定値、計算値、担当者の概算のどれか
- 何件を見たか。単発、代表例、平均、範囲のどれか
- 単位と桁は正しいか。元資料から変換・丸めをしていないか
- 誰がいつ確認したか。現行仕様として承認されているか
元資料の荷重がNで示されているのに、記事ではkgへ書き換えられている例があります。Nは力、kgは質量であり、同じ物理量ではありません。kgfを併記する場合も換算根拠を残し、技術担当者が照合します。なお、1 mm=1000 μmなので、mmとμmの変換を誤ると値が1000倍ずれます。
公差では符号、上下限、表示桁も照合します。「±0.1」と「+0.1/0」は同じではなく、末尾のゼロも元資料に合わせます。
国際単位系(SI)の表記は、産業技術総合研究所・計量標準総合センターのSI文書で確かめられます。単位記号の大文字と小文字を区別し、mm、MPa、°Cなどでは数値と単位記号の間に半角スペースを入れて「20 °C」のように書きます。自社製品の数値そのものは、承認済み仕様書と測定記録へ戻って照合します。
記事内で割合を計算した場合は、計算式、元の値、除外した工程を残します。図表の見栄えに合わせて丸めた数値は、丸める前の値も台帳へ記録します。公開後に質問を受けたとき、計算を同じ条件で再現できる状態が目安です。
規格番号・型式・材質名・版を照合する

| 確認対象 | 見落としやすい点 | 確認先 |
|---|---|---|
| 製品・型式 | 末尾記号、オプション、旧型式、販売終了 | 現行カタログ、製品管理資料 |
| 材質名・記号 | 大文字小文字、類似材、社内呼称 | 図面、材料仕様、正式な発注表記 |
| 規格番号 | 改訂年、廃止・置換、適用範囲 | 規格原文、規格管理担当 |
| 認証・適合 | 対象製品、事業所、有効期間 | 証明書、審査・品質担当 |
| Webリンク | 古いPDF、転送先、掲載終了ページ | 現在の公式ページ |
例えば、シリーズ名が同じでも末尾記号で使用温度や材質が違う製品があります。本文ではシリーズ全体の特長を書き、図は一型式の仕様を使うなら、その違いを注記します。
規格番号を載せる場合は、原稿がどの版を前提にしているかも社内記録へ残します。JISは任意の国家規格ですが、法令の技術基準などに引用されたときは、その法令等において強制力を持ちます。また、JISの該当事項に沿う旨を自社が示す「JIS準拠」と、国に登録された認証機関の認証を受けて表示するJISマークは区別します。詳しくは日本産業標準調査会のJISの説明で確認できます。
JISの規格番号や規格名称は許諾なしで記載できます。一方、JIS本文や図表などを引用・転載するときは、日本産業標準調査会の著作権に関するFAQに従い、著作権者への許諾窓口を確かめます。
参考値・保証値、計算値・実測値を区別する

次の五つの組み合わせを区別します。
| 混同しやすい表現 | 確認すること | 原稿での示し方 |
|---|---|---|
| 参考値/保証値 | 契約・仕様上どこまで保証するか | 「参考値」「保証範囲は個別確認」と明記 |
| 計算値/実測値 | 式から求めたか、測定したか | 計算条件または測定方法を付ける |
| 平均値/代表例 | 母数、期間、選定方法 | 件数と集計範囲を付ける |
| 同時に起きた変化/原因 | 原因を検証できたか | 観察事実と推定を分ける |
| 一般的な傾向/自社確認 | 自社で試験・確認したか | 出典または自社の確認範囲を示す |
「消費電力を30%削減」のような比較表現では、何と比べたのか、同じ運転条件か、どの期間を測ったか、製品全体か一工程かを確認します。一回の測定結果を平均値のように見せたり、装置の一部で得た結果を工場全体へ広げたりしてはいけません。
商品・サービスの効果や性能を一般消費者向けに表示する場合、消費者庁長官は不実証広告規制に基づき、根拠資料の提出を求めることがあります。資料は客観的に実証され、表示内容と対応していなければなりません。ただし、消費者庁のQ&Aでは、一般消費者向けの表示をせず、製造業者へ部品等を単に供給する事業者には表示管理措置は求められないとしています。表示が一般消費者の目に触れる場合などは扱いが変わるため、適用は個別に確認します。根拠がそろわない数値は、条件を限定するか掲載しません。
本文と図表・写真・引用をもう一度合わせる

本文の修正後に図表だけ古い版のまま残らないよう、次を照合します。
- 数値、単位、桁、正負、公差が本文と一致している
- グラフの軸、凡例、期間、母数、除外条件が読める
- 表の見出しと注記が、数字の位置づけを誤解させない
- キャプションと代替テキストが、図にない結論を足していない
- 修正後の最新版をWordPressへアップロードしている
写真は、加工後も顧客名、図番、周辺情報から案件を特定できないか確認します。顧客承認を伴う画像は「製造業の導入事例・技術事例記事の作り方」も参照してください。
外部の図、写真、文章は、出典を示すだけでは使えません。文化庁の著作権テキストで、公表済み、公正な慣行、正当な範囲、出所明示を確認し、条件を満たさなければ許諾を得るか使用をやめます。
図面や工程条件は、営業秘密管理指針の三要件だけでなく、秘密保持契約や公開合意にも照らします。営業秘密に該当しなくても、契約上公開できない場合があります。
作り直した図も、元資料、作図日、確認者を台帳へ残します。
確認ゲートと公開停止条件を決める

担当者名ではなく、次工程へ進める状態を三つのゲートで決めます。
| 確認ゲート | 次へ進める状態 | 保留する状態 |
|---|---|---|
| 事実確認 | 主張と根拠資料が結び付いている | 根拠がない、版が特定できない |
| 公開確認 | 秘密情報、許諾、契約を確認済み | 公開範囲や権利者が不明 |
| 入稿確認 | 承認原稿とWeb表示が一致している | 古い図、数値違い、リンク切れがある |
保留理由と処理結果は台帳へ残します。削除しても結論が変わらない記述は削り、判断に必要な記述は照合が終わるまで公開しません。
入稿後は承認原稿とプレビューを照合し、表の横スクロール、上付き・下付き、μ・±、画像内文字をスマートフォンでも確認します。
まとめ|確認記録を残して仕様改訂に備える

公開前チェックは、すべての欄へ機械的にチェックを付ける作業ではありません。根拠欄が空いている主張を見つけ、公開するか、条件を足すか、保留するかを決める作業です。
原稿と根拠
- [ ] 数値、単位、公差、型式、材質、規格へ印を付けた
- [ ] 原因と結果、比較、効果を示す文を拾った
- [ ] 各主張へ根拠資料、版、ページを付けた
- [ ] 根拠のない記述を削除・限定・保留のいずれかにした
数値と表現
- [ ] 対象、条件、測定・計算方法、件数を確認した
- [ ] 単位換算、丸め、桁、公差、正負を再計算した
- [ ] 参考値と保証値、計算値と実測値を分けた
- [ ] 比較対象と比較期間を明記した
図表と公開範囲
- [ ] 本文と図表の数値、単位、注記を照合した
- [ ] 写真・図面・顧客発言の掲載許可を確認した
- [ ] 引用と外部画像の権利・出典を確認した
- [ ] 画像のキャプションと代替テキストを確認した
承認とWeb表示
- [ ] 事実、公開可否、入稿の確認ゲートを分けた
- [ ] 承認原稿の版、確認日、確認者を記録した
- [ ] WordPress入稿後に本文、図表、リンクを照合した
- [ ] スマートフォンで表、画像内文字、記号を確認した
- [ ] 公開URLと、仕様改訂時の見直し担当を記録した
根拠資料の版と確認者が残っていれば、仕様改訂時に直す記事を探せます。重大な訂正は、読者の判断に影響する変更内容も記録します。
工房もののほんでは、確認箇所の抽出から根拠照合、図表修正、WordPress入稿後の確認まで対応します。作業範囲はサービス資料、個別の原稿相談はお問い合わせページをご覧ください。
