AIに見出し案を出させ、本文まで整えれば、原稿は早く形になります。そこで迷うのが、「どこまで任せてよいか」です。
製造業の記事では、文章の出来より前に二つの関門があります。図面や顧客情報を外部サービスへ入力してよいか。出力された数値や仕様を会社として公開してよいか。この判断をAIへ返すことはできません。
原稿生成の可否から話し始めず、入力を止める人、事実を照合する人、公開を承認する人を先に決めると、使える範囲が見えてきます。
AIに何を書かせるかより、公開判断者を先に決める
AIは文章を作れても、自社の秘密区分、顧客との契約、試験値の有効条件までは知りません。経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版も、AI利用者に対し、出力の精度とリスクを理解した利用、個人情報や機密情報の不適切な入力を避けることを示しています。
例えばWeb担当者が原稿を整え、技術担当者が仕様書と照合し、部門責任者が公開範囲を承認します。顧客名を伏せた事例なら、営業担当者にも契約と顧客承認の状況を確認します。確認者が決まらない記述は、AIへ再質問するのではなく掲載を保留します。
任せやすいのは「新しい事実を足さない」作業
線引きの目安は、承認済みの材料から新しい事実を増やすかどうかです。

| 作業 | AIへ任せる範囲 | 人が行うこと |
|---|---|---|
| 構成整理 | 支給文の並べ替え、見出し案 | 論点の不足と公開範囲を判断 |
| 言い換え | 承認済み文の短文化、読者別の表現案 | 技術的な意味が変わっていないか照合 |
| 校正 | 誤字、重複、表記揺れの候補出し | 固有名詞、型式、単位を原本確認 |
| 数値・規格 | 確認箇所の抽出まで | 現行の仕様書・規格原文で確認 |
| 最終原稿 | 抜け漏れ候補の提示まで | 掲載可否を承認し、公開版を確定 |
「文章を自然にして」と頼む場合も、保証値を参考値へ、推定を実績へ変えていないかを見ます。AIがもっともらしい説明を補ったら、その一文は未確認情報です。
図面・顧客情報・未公開仕様は入力前に止める
入力禁止の候補は、顧客名だけではありません。図番、受注数量、見積価格、担当者名、開発中の型式、試作品の写真、測定条件を含む表も対象です。名称を「A社」に変えても、特殊な形状、納入時期、用途の組み合わせから案件を推測できる場合があります。
個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起では、個人情報を含む入力が利用目的の範囲内か、入力した個人データが機械学習等に利用されないかを十分に確認するよう示しています。
サービスの契約プランや学習設定を確認しても、それだけで入力可にはなりません。社内規程と秘密保持契約を照合し、必要なら公開済み資料だけを渡します。資料の棚卸しは「製造業の製品資料・営業資料をWeb記事にする方法」の手順が使えます。
数値・規格・出典・著作権は原本へ戻る
「この精度は一般的か」「この規格番号は現行か」とAIへ聞いても、その回答は出典になりません。数値は対象型式と試験記録、規格は規格原文と改訂版、引用は原典と利用条件へ戻ります。確認欄にはURLだけでなく、資料名、版、ページ、確認者を残します。具体的な台帳は「製造業の技術記事を事実確認する方法」で紹介しています。
AIが作った文章や図も、そのまま公開せず、既存著作物との類似や素材の利用条件を確認します。文化庁の「AIと著作権について」は、考え方と利用者向けのチェックリストを公開しています。個別の権利判断をAI自身の回答だけで済ませないための参照先です。
まとめ|一枚の運用表に担当者と停止条件を書く
AIの社内ルールには、利用できるサービス名だけでなく、「入力しない情報」「任せる作業」「根拠を確認する人」「公開承認者」「保留する条件」を書きます。公開承認者が未定、根拠資料が不明、顧客確認が未完了。このどれかが残れば公開しません。
工房もののほんでは、AI利用の有無にかかわらず、支給資料から確認箇所を拾い、技術担当者へ戻す原稿を作成します。対応範囲はサービス資料、自社の確認フローに合わせた相談はお問い合わせページをご覧ください。
